季刊誌『InfoMart』

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インタビュー

セキスイハイムpresents
辻井伸行&オルフェウス室内管弦楽団 日本ツアー 2014
【2014年2月11日 公演】

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにおいて日本人として初優勝し、一躍脚光を浴びたピアニスト、辻井伸行さん。
来年1月から始まるカーネギーホールなどアメリカでのツアーは、〝奇跡〟とも賞賛される「指揮者のいない世界最高のオーケストラ」との初共演。公演に先がけてピアノへの想い、コンサートへの想いを語っていただきました。

ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2013

生い立ち、ピアノとの出合い母は、目が見えなくても普通の子どもたちと同じように楽しんでほしいと、スキーや花火大会にも連れて行ってくれましたし、学校では山登りなども楽しみました。

いまでも自然のなかで過ごしたり、鳥の声や川のせせらぎといった自然の音を聞くのが好きなのは、子どもの頃に自然に触れる機会を作ってくれたおかげだと思っています。

2歳のときのクリスマスに、母の歌う「ジングル・ベル」に合わせておもちゃのピアノを弾き始めたそうです。ぼく自身記憶がありませんが、母の歌に合わせて演奏しているビデオが残っています。4歳からピアノの先生に来ていただくようになりましたが、練習曲はまったくやってなくて、ドビュッシーでもクレイダーマンでも、好きなものを弾かせてもらいました。お客様がいらっしゃると、その人の印象をピアノで弾いてみせたりしましたが、こうした遊びが即興演奏や作曲の土台になっているのかもしれません。

音楽家としてピアノを始めた理由は、弾くのが好きだったからだと思います。両親は音楽家ではなかったし、ピアノの練習を強制したりしませんでした。むしろ、ぼくがご飯も食べずにピアノを弾き続けるので、やめさせるのに苦労したそうです。コンクールに出たときも、好きなピアノをたくさんの人に聴いてもらえることが嬉しくて、ほかの人と競うとか、自分が審査されるとか、そういうことは考えませんでした。コンサートでも同じで、お客様が熱心に聴いてくださるのはステージからもわかりますし、緊張はしませんでした。

思い出に残っているコンサートはたくさんありますが、一つだけと言われたら、2011年11月10日のカーネギーホールです。音楽の殿堂というだけあって特別な雰囲気を感じましたし、本番前は自分でも驚くほど気持ちが高ぶってしまい、本番の30分前くらいからすぐにでも舞台に行って弾き始めたい、我慢できない!という気持ちになりました。来年の1月に、オルフェウス室内管弦楽団の皆さんと、また同じステージに立てることは幸せですし、とても楽しみです。

オーケストラの響きに包まれて ~モーツァルトへの想い~オーケストラと共演するときは、演奏をよく聴いて一緒に呼吸を合わせて楽しむようにしています。共演したオーケストラや指揮者からは、「オーケストラをしっかり聴いてくれるから一緒に演奏していて楽しい」と言われます。今回は指揮者のいないオーケストラとの初めての共演なので、どうなるか楽しみです。

今回のオルフェウス室内管弦楽団とはモーツァルトのピアノ協奏曲「戴冠式」を演奏しますが、短い生涯で素晴らしい音楽をあんなにたくさん書いたモーツァルトは、本当に天才だと思います。どんなふうに演奏して作曲したのか、タイムマシンができたら、その仕事ぶりを見てみたいです。それと、モーツァルトの即興演奏もぜひ聴いてみたいし、僕の演奏もモーツァルトに聴いてほしいです(笑)。モーツァルトの協奏曲ではピアニストがカデンツァを用意しなくてはなりませんので、ぼくは自作のカデンツァを弾きます

今回の所沢ミューズでの公演は、アメリカから始まるツアーの最後のコンサートです。コンサートを重ねていくと、演奏は毎回少しずつ変化していくものなので、総仕上げにふさわしいものをお届けできると思います。楽しみにしてください。

これからのこと弾きたい曲、勉強しなくてはいけない曲がまだまだたくさんありますし、作品への理解をより深めていかなくてはなりません。作曲についても、ピアニストのレパートリーとして将来まで残るようなソナタやコンチェルトをいつかは書きたいと思っています。勉強には終わりがないと感じています。

【2014年2月11日 公演】

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