季刊誌『InfoMart』

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インタビュー

前橋 汀子 (ヴァイオリニスト)【2013年4月21日 出演】

50年以上にわたる輝かしい音楽活動の実績を持ち、いまなお最前線で活躍を続ける前橋汀子さん。
4月21日には「ミューズヴァイオリンシリーズ」の第一弾として所沢ミューズに登場します。
海外での修業時代、今日に至るまでの道のり、活動を支えてきた原動力についてお聞きしました。

前橋 汀子 (ヴァイオリニスト)

17歳で渡ったロシア(旧ソ連)私が留学した1960年当時は共産主義まっただなかの、いまとはまったく違う国でした。生活も不便でしたし。それでも、ソ連で音楽を学ぶのは子どもの頃からの夢でしたから希望に燃えていました。

ソ連の文化はすべてにおいて大変レベルが高かったです。この時代のロシアの文化は本当に素晴らしいものだったと思います。音楽、美術、文学などさまざまな芸術に囲まれた最高の環境で勉強でき、本当に幸運でした。ホームシックで寂しくて泣いたりもしましたが(笑)。ワイマン先生のもとで学んだ3年間は人生の基盤になっています。

アメリカへその後、奨学金をいただけることになり、ジュリアード音楽院で学ぶために渡米しました。学校にはしっかりした環境がそろっていました。10代の終わりに両極端の国で学生生活を送れたことは大きかったです。

巨匠たちの思い出私が学んだシゲティ先生との初めての出会いは10歳のときです。日比谷公会堂に演奏を聴きにいって、偶然にも頭をなでてもらいました。20歳を過ぎてからスイスでレッスンを受けることができたのも大変幸運なことでした。

ミルシテイン先生にはレッスンもしていただき、最高のレストランでごちそうしていただきました。プレゼントしていただいた弱音器は、今でも大切に使っています。

こうした先生方の素晴らしいのは、音楽がちゃんと言葉になっていること、そしてその人の声になっているところです。いまでも先生たちのレコードをよく聴きますが、聴くたびにその素晴らしさに驚かされます。もしいま先生たちにお会いできるなら、お伺いしたいことがたくさんあります。

使用しているヴァイオリンについて10年ほど前に偶然にもロンドンで出合った1736年製のグァルネリ・デ ル・ジェスです。私が演奏する前は1世紀ほども弾かれずに眠っていました。私にとって素晴らしい楽器で、音楽をつくるうえで非常に助けられています。

この楽器に巡り合えたのも大変幸運なことの一つです。

50年間の演奏活動を支えたもの私はヴァイオリンしかできませんので、とにかくヴァイオリン一筋にやってきたことでしょうか。それに健康にも恵まれました。また、曲のことを少しでも深く理解しようという気力・意欲がいまでもあります。そうしたことをずっと続けて積み重ねてきた結果、いまがあるのだと思います。

所沢ミューズのプログラムについてバッハの無伴奏はピアノの助けがなく、ヴァイオリンの基礎といえる作品です。伴奏者のせいにすることもできませんし、自分だけで音楽がつくれる、私にとってとても大切な曲です。

また、スプリング・ソナタや小品にはヴァイオリンの素晴らしさがたくさん詰まっています。ヴァイオリンを聴いたことのない人も、ホールに足を運んでその雰囲気や音をぜひ感じていただきたいと思います。

【2013年4月21日 出演】

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