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インタビュー

佐渡裕【2022年5月22日 公演】

ブザンソン指揮者コンクール優勝以来、ベルリン・フィルやパリ管弦楽団など一流オーケストラと共演を重ねる世界的指揮者・佐渡裕。バーンスタイン、小澤征爾の薫陶を受けた若き日々、そして新日本フィルと築く未来への想いについて話を聞いた。

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佐渡 裕[指揮]
新日本フィルハーモニー交響楽団50周年記念演奏会

佐渡 裕イメージ

新日本フィルのミュージック・アドヴァイザー
そして第5代音楽監督就任へ
1989年のブザンソン指揮者コンクールで優勝したあと、日本で最初に指揮したのが新日本フィルでした。1972年にこの楽団を立ち上げ、牽引していた小澤征爾先生は僕にとっては憧れの存在で、よく京都から夜行バスに乗ってコンサートを聴きに来ていましたので、新日本フィルを指揮できるのは本当に嬉しかったです。
オーケストラの定期演奏会を初めて任せてもらったのも新日本フィルです!しかもマーラーの交響曲第6番という大作に挑戦しました。興奮のあまり朝方までスコア(総譜)を読み、リハーサルの初日に寝坊してしまったのは苦い想い出ですが(笑)。温かい楽団員、小澤征爾先生や当時の松原事務局長が支えてくださったので、充実した音楽をつくることができました。デビューから30年以上が経ちましたが、新日本フィルはすみだトリフォニーホールという拠点を持つという意味でも、とても先進的なオケで、とにかく楽団員一人一人の能力が素晴らしい。音楽監督として、トリフォニーホールから次の世代に向けて新しい発信をしていきたいと思っています。

新日本フィルとのデビュー
バーンスタインとの想い出のプログラム
今回の所沢ミューズ公演の曲目は、1990年の新日本フィルへの本格デビューと同じ想い出深いプログラムです。R・シュトラウスの『ドン・ファン』は、僕の人生の恩師であるバーンスタインが、1988年のシュレスヴィヒ ホルシュタイン音楽祭で薦めてくれた曲。作曲家バーンスタインの傑作の1つ『前奏曲、フーガとリフス』も、「カリンティッシャーの夏」という音楽祭で彼が用意してくれた舞台で指揮した想い出の作品です。
また1989年にベートーヴェンの生誕の地ボンで、バーンスタインがウィーン・フィルと演奏したのが、交響曲第7番でした。彼は終演後、公演に来ていた当時のドイツの首相等大物ゲストの面会を待たせたまま、楽屋で僕にこの曲のレクチャーをしてくれたのです。さらに「オレの書き込みがあるスコアで勉強しろ 」と楽譜を貸してくれて、日本デビューはこの曲で勝負しろと薦めてくれました。つまり今回のプログラムは、すべてバーンスタインの深い愛情と熱意なしには考えられない大切な作品ばかり。新日本フィルの素晴らしいメンバーとどのような音楽ができるのか楽しみですね!

ベルリン・フィルの定期演奏会にデビュー
トーンキュンストラー管の音楽監督に
パリ管やロンドン響などヨーロッパの素晴らしいオケと共演してきましたが、正直ベルリン・フィルは雲の上の遠い存在!?と思っていましたので、オファーを受けた時には本当に驚き、喜びました。その決定は正式発表まで人に言えなかったので苦しかったです(笑)フライブルクでヴァイオリンの樫本大進君に会った時「僕、今度ベルリン・フィルの団員として演奏するんです。」と彼が言うので、つい「僕も今度指揮することが決まっているんだ。」と言いそうになりました(笑)。結局、2011年5月にベルリン・フィルの定期演奏会を指揮した時は、樫本君が正式にコンサートマスターに就任していたので、とても心強かったですね。
2015年からは、ウィーンの楽友協会を拠点の1つにするトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任し、コロナによる混乱もありましたが、この6年間本当に充実した活動を行うことができました。楽団員と音楽に集中して信頼間係を築いてくることが出来たと自負しています。例えば、楽友協会でブラームスを指揮する時には、100年以上前ここでブラームスが実際に演奏していたんだと深い感慨と覚悟をもって作品に向き合っています。これは自分を成長させる得難い経験です。

【2022年5月22日 公演】

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