アートマガジン『InfoMart』

  • 小
  • 中
  • 大

インタビュー

金子三勇士(ピアノ)【2020年11月23日 公演】

数々の国際コンクールで優勝し、国内外の一流オーケストラと共演を重ねる気鋭のピアニスト金子三勇士。情熱溢れるピアノ演奏のルーツとベートーヴェン生誕250年を記念する公演への想いについて話を聞いた。

ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団 小林研一郎[指揮] 金子三勇士[ピアノ]

金子三勇士(ピアノ)イメージ

幼少期・恩師との想い出 日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれました。ハンガリー人の祖母が民族音楽の研究者でコダーイ・メソッドによる教育者でしたので、その祖母を通して音楽を楽しく学びました。大好きなピアニスト、コチシュ・ゾルタンによるバルトークの「子供のために」というCDをプレゼントされたのもピアノが好きになった大きなきっかけです。5歳の夏休みにハンガリーを訪れた際、素晴らしいピアノ教師チェ・ナジュ・タマーシュネー先生に出会い、6歳のとき私の強い希望で日本の両親のもとを離れてハンガリーに留学することになりました。ブダペストから40キロ離れた街にあるバルトーク音楽小学校では、同年代の友達とのコミュニケーションなどで苦労することもありましたが、だからこそより音楽の勉強に集中できたような気がします。11歳のときにリスト音楽院に入学し、エックハルト・ガーボル先生に師事しました。この2人の先生からは、多彩な音楽表現の可能性や表現に行き詰ったときの打開の仕方など、大切な教えを数多くいただきました。

2011年にデビュー!充実の演奏活動 2011年のデビュー以来、リサイタル、室内楽、協奏曲など様々な演奏会に出演させていただいていますが、リサイタルは作品に向き合い1人で集中して創造する喜び、室内楽や協奏曲は仲間のパートを勉強し一緒に音楽をつくる楽しさがあります。それ以外にも、バレエや日本舞踊、和楽器など様々なコラボを経験することができましたし、テレビやラジオ、映画などのメディアにも挑戦しました。また子どもたちに音楽を届けるアウトリーチも私の大切な活動の1つです。私が尊敬するリストやバルトークも、当時の常識にとらわれない様々な挑戦をしました。私も音楽の素晴らしさを伝えるため、21世紀にふさわしい新しいチャレンジをしたいと考えています。

ベートーヴェン生誕250周年! ベートーヴェンといえば、偉大で気難しく孤高の人というイメージかもしれませんが、それだけではなく、音楽や人を愛するとても優しい側面にも注目してほしいと思います。また、ハイドン、モーツァルトなどと同じウィーン古典派の作曲家でありつつ、豊かな感情表現によってロマン派の扉を拓きました。特にピアノ協奏曲第5番「皇帝」では、その両方の要素が見事に融合しています。そして、ベートーヴェンの作品のなかでも、とりわけ華やかで明るい作風を感じていただけると思います。ピアノ協奏曲というと、ピアノが主役で演奏をリードしていくものだと思われがちですが、ベートーヴェンの協奏曲は「大きな室内楽」あるいは「ピアノつきのシンフォニー」だと私は考えています。オーケストラとピアノが会話を交わしながら、対等に楽想を紡いでいくのをお楽しみいただけたらと思います。

名門ハンガリー国立フィル炎のマエストロ小林研一郎 ハンガリー国立フィルは、桂冠指揮者の小林研一郎マエストロ、そして私の敬愛する巨匠コチシュ・ゾルタンが育て上げたヨーロッパでも最高峰のオーケストラです。メンバーの多くは私と同じリスト音楽院で学んでいますので、本当に音楽的に共通するものを多く感じます。ハンガリー人は、性格は比較的おとなしいですが、音楽はとにかく情熱的でスケールが大きい! 以前リスト音楽院の美しいホールでハンガリー国立フィルと共演した際、あまりの迫力に椅子から転げ落ちそうになったのを思い出します(笑)。尊敬する小林研一郎マエストロは、日本でもハンガリーでも絶大な人気を誇る名指揮者です。情熱的で燃え上がるような音楽をつくる方なので、まずはそのボリュームたっぷりのサウンドを全身で楽しんでいただけたらと思います。そして力強いベートーヴェンが素晴らしい音響のアークホールに響き渡る、ライブならではの雰囲気をご堪能いただけたら嬉しいです。

【2020年11月23日 公演】

« アートマガジン『InfoMart』に戻る

インタビュー

ミューズチケットカウンター:04-2998-7777

ミューズ利用受付窓口:04-2998-6000

月刊情報紙「ミューズ」掲載広告募集