インタビュー
ジョヴァンニ・ソッリマ(チェロ)【2020年5月16日 公演】
世界的チェリスト、ヨーヨー・マからも絶賛され、美しく壮大な演奏にどこかオリエンタルな土の香りを感じる唯一無二のチェリスト“ジョヴァンニ・ソッリマ”。チェロであらゆるジャンルの音楽を行き来し、作曲家としても活躍するソッリマの魅力とは。
ソッリマの生まれた街「イタリア・シチリア島」 私が生まれたシチリア島のパレルモは地中海のほぼ真ん中にあって、ヨーロッパとほかの国をつなげる橋のような役割をして広がっていった。だから、教会、寺院、食べ物、名前にまでいろいろな要素が混ざっていて、私自身の名前もアラブ、ユダヤ系、スペインなどのルーツがある。音楽も同じで、シチリアに伝わる伝統音楽からは、多くの文化圏とのつながりを聴くことができるんだ。
名門音楽一家で育ち、16歳でドイツへ留学 父はピアニスト・作曲家で、実は200年以上続く音楽一家なんだ。家には数多くの楽器が転がっていて、楽器は学ぶというより面白い遊びの感覚だったね。子どもの頃から父に作曲を習い、ピアノ、オルガン、ヴァイオリン、トランペットも吹いて、チェロは9歳から始めた。まるで17世紀の教育のようだったよ。イタリア最年少の16歳でディプロマ(準学士)をとり、ドイツに留学して世界的チェリストのアントニオ・ヤニグロに学んだ。私は好奇心旺盛で、誰よりも若い生意気な学生だったよ(笑)。ヤニグロは創造的な僕を自由にさせてくれた。チェロだけでなくそれ以上に人間的なところをたくさん吸収したね。
チェリストであり作曲家であること 私は古典的な方法でクラシック音楽の教育を受けた反面、ジャズ、ロックなどは現代的なアプローチで学んだ。音楽だけでなく、音楽の周りに何があるかということに関して興味を持ち、演劇や建築まで“生の表現”は何でも追及したよ。この熱意と好奇心は幼い頃から変わらないよ。私にとってはチェロも作曲も同じだよ。1900 年代初めからどちらか選択を迫る教育システムになってしまったけど、両方経験するのは素晴らしいと思う。私たちは現代に生きているのだから、いろいろなスタイルの音楽と触れ合い、もっとクリエイティブになることができる。もちろん、昔の美しい曲を演奏することも大切だ。
〝氷のチェロ〟でイタリア中をツアー 手作りの楽器は山ほど作った。これは単純に私の「興味」ということに尽きる、病的なほどのね(笑)。水のなかでの演奏や、首に弦を巻きつけて自分がチェロになるなんていうのもやった。“氷のチェロ”は、マイナス12度に冷やしたドームのなかで演奏して、イタリア中をツアーで持ち歩いたんだ。だんだん溶けてきてしまって、ジェラート屋さんの容器に避難させたりもしたよ!これには社会的な意味合いもある。氷のチェロは、水、気候変動など地球の状態を我々に教えてくれ、大切なメッセージを投げかけてくれるんだ。私と自然との繋がりはとても強い。なぜなら音楽はある意味自然の要素の一つだからね。音楽は触れられないものだけど、我々の心に触れてくる。そしてどこかに連れ去ってくれる、そういうものだと思う。
100人のチェリストによる“100 チェロ” “100チェロ”はレヴェルも年齢も関係ない100人のチェリストによる公演でいわばシンフォニーオーケストラと巨大なロックバンドの融合のようなものなんだ。2012 年にローマの劇場を復活させるために始めたこのプロジェクトは圧倒的なエネルギーに溢れていて、以来とどまることがない。昨年、日本でもこの経験を共有できたことはとても素晴らしかった。
2020年初の日本ソロツアー 自分ができる様々な音楽を聴いてもらえるプログラムにするつもりだ。“フォーク・チェロ”とでも言うべき内容になりそうだよ。J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」やバロック音楽、イタリアのタランテッラという民俗舞曲、シチリア島に伝わる音楽、そしてもちろん自作品も。日本的な音楽も組み入れたいし、考えれば考えるほどいろいろな可能性が見えてくるんだ。
【2020年5月16日 公演】